『ロス・カプリチョス』より 祖父の代まで

フランシスコ・ゴヤ
1746~1828
『ロス・カプリチョス』より 祖父の代まで
1799年刊
アクアチント 214×151 mm
説明
『ロス・カプリチョス』は1799年に出版された全80点からなる銅版画集です。題名に使われている「カプリーチョ」という言葉は「突拍子もない行い」「理性ではなく、気まぐれやこだわりによってなされる人の行い」を意味します。ゴヤはこの版画集で、当時の古い考えにしばられたままのスペイン社会のあり方を諷刺したといわれています。
家系図を手に得意そうな顔のロバ。机には紋章が飾られ、かなりの名門であることを示しています。しかしロバには「愚か者」のイメージがあることから、ゴヤは血筋しか誇るものがない貴族階級、さらには家柄さえよければどんな者でも地位が得られる身分制度を批判していると考えられます。この作品は技法のうえでも興味深く、エッチングによる線を使わず、アクアチントによるハーフトーンだけで描かれています。アクアチントは水彩画のような濃淡の効果を出すために考案された技法で、主に水彩画などを複製した多色刷り銅版に多く用いられていました。ゴヤはこの技法を使いこなし、ロバの身体や開いた本の立体感や、背後に広がる漠然とした空間などの表現に活かしています。