コレクション 町田市立国際版画美術館

ターザンがやってくる(青)

横尾忠則
よこお ただのり
1936(昭和11)年生まれ

ターザンがやってくる(青)

1974(昭和49)年
スクリーン・プリント(多色)

説明

1960年代の時代の空気を反映したセンセーショナルなデザインで一世を風靡し、1980年代にアーティストに転身した横尾忠則。マルチに活躍する横尾にとって、商業デザインとファイン・アートの狭間にある版画は、両者をまたいで作家の創作を通観できる重要なメディアです。

横尾の作品は一見するとサイケデリックな色彩で奇想天外なイメージに溢れています。しかし主要なモチーフを紐解いていくとごく私的な経験を反映しているものが多く、この作品に描かれた「ターザン」もそのひとつです。スイスのグラフィック雑誌『GRAPHIS』の表紙デザインのために制作した本作。大きく開いた口と、唇と同じ色で画面に踊る力強い文字が印象的です。横尾が幼い頃に初めて観た、映画『ターザン』で主人公を演じたジョニー・ワイズミュラーの姿を描いています。横尾にとってターザンは理想的な身体を持ち本能に忠実、自然と調和した神のような存在です。作家が当時感じていた現状の閉塞感を打破し、楽園へと誘ってくれるアイコンといえるでしょう。
後にデザイナーからアーティストへと生まれ変わろうとした頃、横尾は自らがターザンになりきり森の中で衣服を脱ぎ捨てます。人間の野生に訴えかける雄叫びが聞こえてきそうな本作は、作家の未来を予見するかのようです。

閉じる