コレクション 町田市立国際版画美術館

道端に三軒の切妻屋根の家のある風景

道端に三軒の切妻屋根の家のある風景

レンブラント・ファン・レイン
1606~1669

道端に三軒の切妻屋根の家のある風景

1650年
銅版(エッチング、ドライポイント) 162 x 204 mm

説明

レンブラントが生きた時代のオランダではようやく、戸外に出て目にした風景をスケッチすることが盛んになり、多くの風景画家が生まれました。アムステルダム郊外の路傍の風景を描いたこの作品、立派な城や屋敷があるわけではなく、名所のような場所でもありません。当時この町に暮らしていた人なら誰でも目にしたにちがいない何気ない風景が一つの作品として差し出されているのです。そのこと自体が実はとても斬新なことだったのです。

この作品は銅版画としてもすぐれています。右手前の樹木の葉のふっくらした茂みや木陰、左奥へと続いてゆく轍の残る道が、はるかな遠近感を生み出しています。空の部分には薄いグレーの調子があります。これは銅版の上に引き伸ばしたインクの拭き取りを微妙に調整して残したトーンです。レンブラント自身か、あるいはその助手でしょうか、この版画を刷った人の手の痕跡が直接、そこに残されているのです。白からグレー、そして深い黒へ、モノトーンの中にも豊かな諧調が生まれています。レンブラントは版画を刷る紙にもこだわりをもっていました。ヨーロッパ人として初めて日本の紙、つまり和紙に刷ったのもレンブラントです。本作は和紙ではありませんが、意外なところで日本と深いかかわりのある人なのです。

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