白い像

畦地梅太郎
あぜち うめたろう
1902(明治35年)~1999(平成11年)
白い像
1958年
木版(多色) 692 x 453 mm
説明
畦地の代名詞ともいえる山男シリーズ、その中でも代表作とされているのがこの作品です。枯木の林の向こうに立つ人物を、畦地は「心象的人物」と呼んでいます。山の大きさ、深さ、美しさ、恐ろしさなど、さまざまなイメージを人の姿をかりて表現しているのです。
愛媛県に生まれた畦地は、晩年を町田市鶴川で過ごしました。町田を第二の故郷としていつくしみ、当館への300点近い作品の寄贈、鶴川市民センターの緞帳デザインなど、大きな財産を残しています。
山の風景を題材とした作品で版画家としての地位をすでに得ていた畦地が「山男」のテーマに取り組み始めたのは50歳を過ぎてのことです。「ありのままを、ありのままに描く絵にむなしさを思う」ようになり、「わたしの心の山男」を版画に作るようになったと語っています。創作の出発点はいつも山での自分の体験にありましたが、それを普遍的なものとして表現することを畦地は心がけていました。どこの誰でもないけれど、どこの誰でもある存在、それが畦地の描く山男たちなのです。