コレクション 町田市立国際版画美術館

風俗三十二相 遊歩がしたさう 明治年間 妻君之風俗

風俗三十二相 遊歩がしたさう 明治年間 妻君之風俗

月岡芳年
つきおか よしとし
1839(天保10)~1892(明治25)

風俗三十二相 遊歩がしたさう 明治年間 妻君之風俗
ふうぞくさんじゅうにそう ゆうほがしたそう めいじねんかん さいくんのふうぞく

1888(明治21)年
木版(多色) 356 x 241 mm

説明

花をいくつもつけた豪華な帽子に、青いリボンの付いたドレス、よく見ると、髪にも真っ赤なリボンを付けて、手には洋傘を持っています。髪型も、それまでの結髪(けっぱつ・日本髪)とは違う、束髪(そくはつ)と呼ばれるスタイルです。いずれも、当時最新の西洋風のファッションです。洋装のこの女性は、裕福な家庭の若奥様。花菖蒲が咲き誇るなか、うれしそうに歩を進めます。とびきりのおしゃれをして、これからどこかへお散歩に行くところでしょうか。

江戸時代から明治までの、さまざまな階級の女性を描く『風俗三十二相』は、それぞれの女性たちの着装のみならず、その内面や彼女たちが置かれている状況までをも写し出すような、細やかな描写を特徴としています。
『風俗三十二相』シリーズの最後を飾るのが、この「遊歩がしたさう」です。最先端の風俗に身を包む女性は、まさに明治という新しい時代を象徴しているように思えます。しかし、当時にあっても、このような洋装をしていたのは、上流階級のごく一部の女性たちだけでした。『風俗三十二相』には、明治時代の女性が全部で9人描かれていますが、洋装をしているのは、シリーズ中この若奥様だけです。芳年はこのシリーズを描くにあたり、描く女性の生きた時代や身分、年齢や職業によって、髪型や着装、そして表情やしぐさを絶妙に描き分けているのです。

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